エピソード11 慣習の洗礼

仕事柄、海外に出張することがたまにある。慣習がわからず失敗することもよくある。
そんな1コマを紹介しよう。

マレーシアボルネオ島。かって日本軍が占領していた南方の島である。ここで、ここの
観光案内をするつもりはないが、予想より近代的な町であった。まあ、ヒルトンがあるぐらい
やから。
打ち合わせ会社の近代的オフィスビルのトイレに入った。洋式便器が一つ。
なんのことはなく、普通のものであり、ちょっと違うなと思ったのは、便器の真中に、
ノズルがあることと、便器の回りが異様に水浸であるということぐらいか。
用をたし、水洗なので、水を流すレバーを捜した。なかなか見つからない。

やがて、正面にボタンらしきものを発見。疑いもなくプッシュ。
なにが、起こったのか一瞬われを疑った、既に遅し、ズボンの前面、全身がずぶ濡れ。
なんと、便器の真中のノズルから勢いよく、ジェット水流のごとく、水が発射。
正面から、ボタンを押したので、まともにくらったのである。これで、わかった、便器の回りの
びしょ濡れの状況がなんであったのか。ということは、他にも被害者がいるはずである。
私は最初、このノズルはビデのノズルと思っていたのであるが、どうも違うようである。
結局水洗用のレバーは、便器の横の見えにくいところにあった。

私:
「おい!びしょ濡れや!たまらんで!」
F君:「どうしたんですか?まさか、トイレでシャワーを浴びたんでは?」
私:
「なんでわかんねん。」
F君:「私も、あのボタン押しましたから。私は、横向きで押したんで
   水流は間一髪で、背広の横を掠め、5mほど飛びましたから。ドアまで飛びましたからね!」
私:
「知ってたら、教えてくれよ」
F君:「いやぁ。忘れてました。正面から押すと大変ですよね!」

出張者全員に聞いてみると、結局トイレに行ったものは、全員その洗礼を受けていた。
現地人にあのノズルは何かと聞いてみると、大きい方の用をたしたとき、紙で処理せず、水流で
洗い流すそうである。さぞかしきれいに、落ちることでしょう。

<=Back